地形の名称と歩き方
登山道の説明のなかに、ガレ場や岩場などさまざま地形が出てきます。
どのような道や状態をそう呼ぶのかを整理してみます。
子供を連れてハイキングや登山を行うのですから、安全第一で臨みたいですね。
山の登山記録や情報をWeb検索したり、他の人から登山道の状況を聞いたり、する場合にもきちんと把握しておくことは大切なことです。
また、簡単ですが歩き方などの注意点も合わせて載せておきました。
他のハイキングされている方と話すときにも知っておくと便利ですので、一読をお勧めします。
いろいろな呼称があると思いますが、代表的なものを挙げておきます。
ザレ・ザレ場
山腹の崖崩れ場所。砂礫地。
「ガレ」より岩屑がこまかく小石や砂を敷いたような場所をいいます。
ザレは、火山の火口周辺や、花崗岩などの岩盤が露出した山に多く存在します。
ザレ・ザレ場の歩き方
ザレを通過するときは、小石や砂に足をとられ’ズルッ’と滑ることがあります。
登りは比較的滑ることが少ないのですが、下りはズルッと滑っている人を見かけます。
下りは疲れていることや、滑るのが怖いので体重を後ろにかける傾向がある人が滑り易いです。
滑らないようにするためには、地面に対して垂直・90度で足をおろすことが重要です。
垂直におろすと足全体に体重が掛かるので滑りづらくなります。
後ろに体重を掛けると、かかとに体重がかかり、かかとが前にズルッと滑ります。
ザレは、場合によっては踏み跡が残りづらいため、踏み跡をよく確認することが大切です。
とくに大きなザレ場では、道を見失うとすぐに元の道に戻ることができなくなるかもしれません。
※ザレの堆石が厚くなると「ザク」とも呼びます。
ガレ・ガレ場・ガラ・ガラ場
砕石の堆積した斜面。
岩壁や斜面から崩落した岩クズが辺り一面に散乱して堆積している場所のことです。
「ざれ」より石が大きいものを言います。
傾斜角が30度以上の急なものを「ガレ」といい、それより平らな場を「ガラ・ガラ場」という。
更に大きな石や岩がゴロゴロところがっているところは、「ごうろ」、「ゴーロ」と呼ばれます。
ごうろが広範囲にわたっている場所は【ごうろ帯】と呼ばれます。
石の大きさは様々で、大きいものは数メートル~数十メートルにおよぶものも。
人間の背丈よりも大きな石が数多くある場所は【巨岩帯】といって区別することもあります。
ガレは、沢の源頭や高山の稜線に多く存在します。
ガレ・ガレ場の歩き方
ガレ場を歩くときは、自身の身の安全確保と落石等で他人を傷つけないようにすることが大切です。
まず浮石に乗ってしまうと、バランスを崩し転倒しやすい場所です。
転倒だけでなく、足をくじいたりもします。
足元が崩れかけている場所や安定していな岩クズを避け歩くようにします。
安定した場所をさがして一歩一歩慎重に歩くようにします。
みんなが良く使うコースは安定していることが多いですので、コースを外れることなく、マークに従い、コース上を歩くことが大切です。
また、岩は雨が降ったりして濡れていると滑りやすいです。
岩が濡れている場合は、安易に乗らずに滑らないように注意して歩きましょう。
ガレ場は不規則な形のまま堆積したために落石も起こりやすいです。
下に人がいる場合などは、不注意に歩いて岩を落とさないように注意が必要です。
また、ガレ場では落石の危険があるため休憩は止めましょう。
岩場
岩肌がむき出しの山道のことです。
岩につかまって登り降りをするような場所を言います。
ロッククライミングをする岩の壁もそう呼ばれることがあります。
岩場の歩き方
基本的に岩場は難所とされています。
中級以上の登山者が登るコースとされます。
ただ、子供には岩場が楽しく感じることも多く、安全を確保しつつ岩場を楽しめるコースもありますので親の技量があれば岩場を楽しみたいものです。
岩が濡れていると、ガレ場と同様に足を滑らす可能性が高いので、注意して足を運んでください。
岩場を安全に登り下りする基本技術に「3点確保」があります。
「3点確保」(3点支持)
まず岩場で焦ること、慌てること、急ぐことは最もしては行けないことです。
逆に、焦らせること、慌てさせること、急がすことは、決してしてはいけません。
岩場では落ち着いて、手がかり、足場・足がかりになる岩の突起や割れ目を見きわめます。
※子供と同行する場合は足場がしっかり確保できる岩場を楽しみましょう。
基本は手足の4点がいずれも岩をとらえた状態です(基本状態)。
そこからは、いずれか1点だけ順次交代で動かすようにします。
これを「3点確保(3点支持)」といい、岩登りの基本技術になります。
基本状態から、無理のない距離、あまり遠くの手がかりや足場をとらえようとせず、小刻みに岩場を移動するようにします。
遠くの手がかりや足場は体を伸びきらせてしまい、3点確保が困難になり、エイ!ヤー!と移動することで、転落につながります。
重要なのは2本の手、2本の足が無理なく収まる範囲で手がかり、足場が得られる「ルート」を探しつつ登ります。
※子供は大人に比べ手足が短いので決して無理をさせないようにしましょう。
クサリ場(鎖場)、ハシゴ
険しい岩場などに、安全のために鎖が取り付けられている場所。
梯子を取り付けている場所は【ハシゴ場】という。
一般登山道の急斜面の岩場などに、登降時の安全確保のための「鉄のクサリ」が設置されていることがあります。
ロープやクサリ場は急勾配の斜面の他、両側が切れ落ちているヤセ尾根などの危険な場所を、安全に通過できるように設置されているものです。
子供を同行する場合は、クサリ場(鎖場)は避けたいところですので事前に調べるポイントになります。
低山でも設けられているところもあります。
クサリ場は通過に危険と判断された場所に設けられているものですので、過信や安易な判断をせず慎重に検討しましょう。
クサリ場(鎖場)、ハシゴの登り方
まず、クサリはバランスを取るための物です。
クサリ場を通過するポイントは「クサリに頼りきりにならない」ということです。
クサリをたぐり寄せるようにして腕力で登っていく人が居ますが間違っています。
クサリは鉄製であっても万が一のことがあるかもしれませんし、手が滑ることもあります。
クサリはあくまでもバランスを取るために持ち、手の力ではなく足で登り下りしましょう。
ハシゴは鉄製の他に木製もあります。
朽ちていないか、ボロくなっていないか確認しましょう。
はしごはほぼ垂直に設定されている場合が多いです。
下にいると物が落下してくる可能性もありますので、注意を払いましょう。
腰が引けすぎるとバランスを崩す元になります。怖がらずに姿勢正しく登りましょう。
※クサリ・ハシゴともに、1区間につき1人が使用することが基本です。
巻き道
滝や淵やガレ場などを避けて、安全に迂回して登ることができる道。
尾根・ヤセ尾根
尾根(おね)は、谷と谷に挟まれた山地の一番高い部分の連なりのことです。
山稜(さんりょう)、稜線(りょうせん)とも言います。
富士山のような円錐形の山では尾根は明確には存在しませんが、雨による浸食で谷ができ始めると、尾根ができるようになります。
尾根は位置が把握しやすく、コースがわかりやすいため、道としてよく使われています。
また、山頂と山頂を結ぶ尾根は特に稜線・主尾根と呼ばれ縦走する場合に良く使われます。
山頂から谷へ向かう尾根は、枝尾根・支尾根と呼ばれます。
尾根の中でも両側の両側の斜面が急峻で道幅の狭い尾根をヤセ尾根・瘦せ尾根と呼びます。
ヤセ尾根の他に、鎌尾根、馬の背、剣の刃渡り(つるぎのはわたり)、金冷やし(きんひやし)などと呼ばれたり、外国語ではアレート(仏: arête)、グラート(独: grat)、リッジ(英: ridge)と呼ばれます。
氷河の作用(氷食作用)によって作られた痩せ尾根は、日本では特にアレートと呼ぶ場合が多いです。
ヤセ尾根の中でも特に急なものは、ナイフエッジ(英: knife edge)とも呼ばれます。
ヤセ尾根の歩き方
足もとに充分注意して歩くのはもちろんですが、登山者が交差するだけの道幅のない尾根もありますので、通過する前に逆方向からくる登山者がいないかどうか確認してから進みましょう。
木道
木道とは、貴重な食物を保護するために、湿原などに敷設されている木の道のことです。
丸太組の木道もなくはないですが基本的に凸凹が少なく、湿原などに設置されていることから平坦な道です。
木道の歩き方
木道はとにかく滑りやすいです。
山道の木の根も濡れているととても滑りやすいですね。
雨や朝露で濡れていると迂闊に歩くと滑ってこけてしまします。
子供と同行するときは、子供の安全のためにも、保護区に落ちないためにも、十分注意させましょう。
また、整備が行き届かず朽ちた木道も見かけることがあります。
踏み抜いた穴にハマることはないと思いますが、自分が踏み抜いてこけないようにしましょう。
歩くときにはすり足気味に両足を動かして慎重に歩くと滑りにくいし比較的安全です。
木段
木段とは、急坂や段差に設けられた木組みの階段です。
木段の歩き方
木段も濡れていると滑ります。
下りの時に良く滑るので安易に足を乗せないようにしましょう。
また、歩幅などが合わず歩きにくいと感じる木段もありますが、木段は登山道の侵食防止や植生保護という意味もありますので、道をはずれずに歩きましょう。
渡渉(としょう)
渡渉とは、沢に橋がなく、飛び石伝いや水流に踏み込んで渡ることをいいます。
一般的な登山道でも、ごく小さな流れを渡渉する場合があります。
渡渉の歩き方
飛び石は伝いは、思わぬ事故につながります。
全体重が乗っているときに滑って転んだり、石が安定していなく足場が崩れたり。
勢いよく渡るのではなく、足元を確保しながら渡りましょう。
子供と同伴の場合は、特に水流に注意してください。
沢の水流は、想像以上に力が強く、徒渉できるのは靴に水がかかる程度まで。
足首以上の深さになると危険、膝まであったら歩くことも困難です。
とくに雨天後など沢が増水しているときは、充分な注意が必要です。
雪渓(せっけい)
雪渓とは、残雪のことで、周りの雪が解けているのに谷や沢の積雪が溶けずに残った雪およびその地帯のことです。
稜線や斜面の窪地の残雪を「雪田」と区別して呼ぶこともあります。
夏山の一般コースでも雪渓が残っている場合があります。
雪渓の歩き方
子供と同伴で雪渓をあるこことはないと思いますし、同伴するなら大人のスキルは十分と思いますが。。。
大規模な雪渓を歩く際は、靴底に装着する滑り止め「アイゼン」が必要です。
亀裂(クレバス)をさけたり、雪の上を転がる落石に警戒する、といった危険回避も重要です。
右岸/左岸、出合、頭
沢(谷、川)の上流から下流を見て、右の岸を「右岸」、左の岸を「左岸」と言います。
沢に沿って上流へ登っていく場合はでも「沢(谷、川)の上流から下流を見て」です、間違えやすいので注意しましょう。
「出合」とは、沢や川の支流が本流に注ぐ地点を呼びます。
また、登山道の分岐や、登山道と車道が交わる地点などでも使います。
「頭(あたま、かしら)」とは、沢の源頭にあたる尾根上の突起を呼びます。